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My Lens & My Life

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レンズ雑学001 絞って収差を抑える、とは?

写真好きとして知っておくと「ちょっとドヤ顔」できるレンズや写真にまつわる雑学を難しい式を使わずにシミュレーションや実写で紹介してみます。

 

 

テーマ

第1回目のテーマは「絞って収差を抑える」とは何か?です。

 

周りに写真の先輩・師匠みたいなのがいますと、そんな人たちがさりげなく使うフレーズが

 ◇『絞って収差を抑えるんだよ』とか

 ◇『開放だと収差で描写が甘いね』とか

ではないか?と思います。

初めて聞くと専門家みたいで「何ソレ!かっこいい」と思うかもしれません。

しかしその師匠達も「絞りと収差に関係性がある」と、ふんわりとにおわせるだけで詳細を教えてくれません。

私調べではこんな表現を口に出して使う人の98%は正しい意味を理解しておらず、雑誌などに記載された専門家のコメントを鵜呑みにして語っているだけです。

さらにはレンズのレビューをしているライターのような方でも正確な意味を理解できている方は多いとは思えません。

 注:あくまで「私調べ」からの推測です 。

 

絞りの機能

絞りの機能について簡潔に表現すると3つの機能として表現できます。

 1.光量を調整する

 2.深度を調整する

 3.球面収差をカットする

ここで第3の機能として挙げているのが「球面収差をカットする」機能です。これが今回のテーマでもあり、これを理解すれば絞りによる収差のコントールを意のままに行えるようになります。

 

図解:球面収差と絞りの関係

 絞りによりカットされる収差は球面収差です。厳密にはハロとコマ収差もカットされる収差に含まれますが簡易的には同じ現象ですから割愛します。

ではまず「球面収差とは何か」を模式図で解説します。

f:id:takayama-jin-blog:20200128105645j:plain

上の図は「絞り」と「1枚のレンズ」だけで構成された写真レンズの中心部に結像する光の様子です。実際の光は無数に入ってきますが、図の製作上①~④の4本のみに限定し簡易的に表現しました。 

小学生の頃に虫眼鏡で紙を焼く実験をやった記憶のある方は思い出してください。

注目すべき現象は①~④の光線は完全に1点に結像しないということです。このズレが球面収差と呼ばれる現象の根源です。

①を基準に②~④の集光位置のズレをグラフにプロットしたのが球面収差図になります。

要は球面収差とは「点に結像しない」様子を表しており、オールドレンズ愛好家の好むふんわりとした描写の元になります。限られた設計自由度の中でこの収差を残しつつまとめ上げるのが設計者の腕であり、レンズの味のひとつになります。

 

図解:絞ると球面収差はどうなるか?

続いて絞るとこれがどう変化するのか説明します。

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絞り羽を出して絞り込むとレンズ中心の一部の光線だけが通過します。これは通過する光の量を減少させて明るさをコントロールしている事も示しており、本来の絞りの機能の主用途です。しかし同時に大きな球面収差の原因となっていた成分がカットされる様子も示しています。

絞り込みにより球面収差が減少することで解像度の高いカリカリな描写になります。

 

注意点としては、どんなレンズでも球面収差がコントロールできるわけではありません。

 ・構成枚数が多く高価なレンズ

 ・Fnoの暗い(大きい)レンズ

 ・超広角レンズ

 上記のレンズは球面収差が元々小さく設計されているので絞り込みによる効果が小さいと思ってください。

要は大口径のオールドレンズや50mmF1.8のような安価なレンズで楽しめる現象になります。

 実例:シミュレーション

 シミュレーションを使ってもっと具体的に説明したいと思います。

Zuiko 50mm F1.2 開放

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画面中心部に結像する光線だけを表示してみました。一見するときれいに集光しているように見えます。

次に結像の焦点部分を拡大していみます。

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焦点部分を拡大してみると完全には1点に集中しているわけではありません。

これを球面収差図で表してみます。

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先端部がだいぶアンダーに曲がった特性で球面収差は大きい部類です。Fno1.2の超大口径をこの枚数で設計するのですから当然の現象ではあります。

解像力の指標であるMTFも記載しておきます。

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ベストピントの位置におけるMTF値は約0.55になっています。(山の頂上)

MTFは理論上の最大(無収差)を1.0としてその比で表現されます。私のブログでは20本/mmという線の細さでのMTFを記載していますが、現代的な高性能レンズの開放Fnoの画面中心部のMTFは経験的に0.8前後です。このレンズのMTFの0.55とは若干低い(解像力が悪い)の位置付けとなります。球面収差的に妥当ですが。

 

続いて絞り込んでみます。

Zuiko 50mm 小絞りF5.6

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 絞りをF5.6Fまで絞り込むとこんなに少ない量(細い)の光線になります。

これを球面収差グラフで表現すると

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このグラフの縦軸は光線の通過する最大径を1.0として表示し、光の通らない箇所は非表示にしています。このグラフスケールでは値が小さすぎてほとんど見えないようなグラフになりました。それほどに収差が減少するのです。 

解像力の指標であるMTFも記載しておきます。

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ベストピントの位置におけるMTF値は約0.95になっています。

球面収差はゼロに近い量ですが、絞りによって改善しない軸上色収差などの影響で100%までは至りません。

40年ほど前に開発されたレンズですが、少し絞ればほぼ無収差で現代的なレンズにも劣りません。これが大口径単焦点の力で、開放の甘さと小絞りのキレを楽しむのがオールドレンズ遊びのひとつです。

 

また、さらに絞り込むともっと性能が良くなるかと期待しますが、一般的にFno8.0より暗い側(大きい)へ絞り込むと「回折」という現象が発生し解像力は低下してしまいます。

Fno16ぐらいの写真を見て解像力低いな(眠い描写)と思ったら「絞り過ぎて回折っぽいね」とコメントするとさらにドヤれるわけですが、回折の説明については今後検討します。